出会い系
恋愛がしたい。
いつの間にか、最後に付き合ってから約2年が経とうしている。
そんな現在の自分は、仕事も辞めて、バイトもせず、家で家事を淡々とこなしている。
最早主夫である。
そんな僕でもやはり恋愛をしたい。
しかし、主夫のような立ち位置で外に出るとなると、食材を買いにスーパーに行くくらいのもので、出会いなど1mmもないのである。
周りはほとんど大学生なこともあってか、このまま恋愛もせず、一生童貞のまま死ぬんだろうかと考えると、冷や汗をかき始めて来たので、悔しい気持ちを押し殺しながら、マッチングアプリを登録することにした。
名前や写真を登録した。
名前は簡単なニックネームを付けて、顔写真はガチで出会いを求めているため、リアルな顔写真を載せた。
いろんな過程を経て、ついにプロフィール登録が完了した。
大昔から男という生き物は、食料を得るにも、女を得るにも、自発的に行動してきた。
まずは行動すること。
マッチングアプリに関しても同様だった。
まずは、この人いいなと思った人を片っ端からいいねして行く。
女の子の顔面を見定める自分は、神様かなにかと錯覚しそうになった。
ただ、普段からアイドルを見てきている僕。
目だけは異様に肥えている為か、これをいいねと押すプライドが許さないのか、いいねを押す数が全く増えない。
それでも、時間をかなり要して、限界までいいねできる数まで使い切った。
すると、早速1人目の女の子からいいねが来た。
名前は、カスミちゃん(仮名)
写真はプリクラだったので、実際の顔とは異なる可能性が高いので、信憑性は低いが、ショートカットの可愛らしい子だった。
カスミちゃんからメッセージが来た。
しかし、ここで緊急事態である。
基本無料だから、すぐに繋がるんだろうと思ったが、まずメッセージ(TwitterでいうDM)の内容を読むには課金しなければならなかった。
しかもこの機能は、女性は無料だが、男性は有料らしい。
なんだその不平等な規則は、と難癖を付けながら、これも経験だと思って課金した。
それに、何とメッセージが来たのか、ここまで来ると気になって仕方がなかった。
カ「こんにちは!日向坂好きなんですね!」
僕のプロフィールの「日向坂46」に好印象を示してくれたようだ。
ドルヲタという要素は、時にマイナス要素になってしまうので、付けようか迷ったが、現にこれを見てメッセージを送ってきてくれているので、すぐさまガッツポーズをした。
カ「私はべみほ(渡邉美穂)とひなの(上村ひなの)が好きなんです!」
ふ〜んいい子だ。
謎の上から目線で話を続ける。
カ「実は今日このアプリ始めたんだ〜」
カ「結構おじさんからいいね来てて困る笑」
マッチングアプリにも、やはりおじさんは居るのか。
僕は同じ境遇でもあるおじさんに同情した。
暫くすると、カスミちゃんから元彼の話をされる。
カ「つい一昨日に彼氏と別れたんだ、ずっと片想いで、やっとの思いで告白して、1年くらいして別れたんだ。」
僕にもかつて元カノが居たが、それと同じような感覚を覚えた。
絶対この子は辛いだろうな。
おじさんと同じく、カスミちゃんにも同じような同情の目を向けた。
カ「でも私、結構束縛強くてさ」
カ「私以外の女の子とLINEすらして欲しくない」
カ「だって彼女おったら他の女の子との絡みとかいらんくない?」
え、いや重っ
君の恋愛重量、ゾウさんですか?
パオーン言うてます?
あ、これが俗に言うメンヘラってやつですかね?
この人の顔写真よく見たら、リスカしてそうな顔だもん。
俺と会ったら、長い鼻で俺を掴んだ挙句、口に入れてゴリゴリ食べそう。
身震いがさっきから止まりません。
カ「ごめん、こんな話して笑」
カ「私ってメンヘラよな?笑」
一同「100メンヘラです」
そのメンヘラカスミちゃんとは、LINEまで漕ぎ着けたものの、なんだか怖くなってLINEを変えました。
その他にも、LINEまで行った人はいたんですが、なかなか恋人としていい人というのは見つからず。
課金も虚しく、出会い系を退会しました。
退会する前に、お遊び程度に、自分のプロフィール画像を、ネットで拾った素人のイケメン画像に変更しました。
すると、あら不思議。
自分の写真のいいねの30倍来ました。
世の中の不条理が見て取れます。
僕も含めて、結局顔で選ぶんだなと思いました。
以上、世にも奇妙な物語でした。